犬の心臓病で飼い主ができること

 

犬の心臓病とはどんな病気か

犬の心臓病には、大きく分けて「僧房弁閉鎖不全症」と「心筋症」の2種類あります。

僧房弁閉鎖不全症とは?

僧房弁が完全に閉じなくなる病気です。
心音の雑音があることで発見される病気で、多くは7歳前後から見られ、一番多いのは、10歳くらいといわれています。

心筋症とは?

1. 拡張型心筋症

左心室を中心として心筋の変性と、変性に伴う線維化が起き、左心室が拡張し、心筋が変形するため収縮する力が弱くなる病気です。

2. 不整脈原性右室心筋症

右心室の心筋の壊死やアポトーシス(細胞の脱落死、細胞の自殺ともいう)が起こり、不整脈を引き起こします。
他に、肥大型心筋症や拘束型心筋症もありますが、犬での発症は珍しく、発症例も少ないです。

どんな症状があらわれるの?

僧房弁閉鎖不全症の症状は?

疲れやすいため、以前に比べ運動量が減ったり、すぐに座り込んだり、横たわったりするようになる症状がみられます。加齢によるものなのか、病気によるものなのか判断しにくいため、気が付かずに進行している場合があります。

初期の段階で、激しい運動や興奮した時に、のどに何か引っかかっているような咳をします。進行していくと、水を飲む、食事をした時にもむせるようになります。
重症になると、運動を嫌う、散歩の途中で座り込むようになります。

さらに、慢性的に進行していくと、肺に水が溜まり、肺水腫を起こすと、呼吸が荒くなり、呼吸困難を起こすこともあります。

急性的な場合には、左房破裂や肺水腫を起こして、急死する場合もあります。

心筋症の症状とは?

1.拡張型心筋症

疲れやすい、運動をしたがらないなどの全身的な症状が表れてきます。健診などで、不整脈がみられる場合があります。
進行してくると、肺水腫、呼吸困難を起こします。全身に血液が循環しなくなるため、腎不全や心不全を起こすことがあります。

2. 不整脈原性右室心筋症

右心室の心筋の壊死やアポトーシス(細胞の脱落死、細胞の自殺ともいう)が起こり、繊維脂肪組織が置き換わるときに、右心室での伝導障害が起こり不整脈を発生させます。

心臓病にかかりやすい犬種とは?

僧房弁閉鎖不全症の場合

中型犬より小型犬に多く発症します。

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、マルチーズ、その他小型犬全般

心筋症の場合

1.拡張型心筋症

ドーベルマン、ボクサー、ゴールデンリトリバー、アメリカン・コッカー・スパニエル、ダルメシアン、グレート・デーン

2.不整脈原性右室心筋症

ボクサーに多くみられます。

心臓病の原因とは?

僧房弁閉鎖不全症の場合

多くの原因は加齢といわれています。僧房弁の粘液腫瘍変性によっておこりますが、変性を起こす原因は不明です。

心筋症の場合

原因は不明です。人の場合は遺伝子異常が見つかっていますが、犬の場合は遺伝子が特定できていません。ドーベルマンの場合は家族性である場合があり、大型兼に多い心疾患です。

心臓病の検査方法と治療について。

心臓病を的確に判断する場合には、検査が重要です。

聴診での心雑音だけではなく、ほかにも詳しく検査を行っていきます。

心電図検査

不整脈の有無や心拍数がわかります。
寝かせた犬の肢にクリップをつけて心電図を測ります。

X線検査(レントゲン検査)

心臓の大きさを確認し、心房、寝室が肥大していないか診断することができます。
肺や気管、気管支の状態を把握することが可能です。

心エコー検査(超音波検査)

心臓内部の状態や血流の判断を行います。心臓内部の様子を動画で確認することができます。

心臓カテーテル検査

心エコー検査でわからないところを診断でき、外科手術を行う場合には必須の検査であると同時に、カテーテルを利用して手術を行う治療もあります。

全身麻酔をして、首や胸の血管から心臓までカテーテルを挿入して行います。

僧房弁閉鎖不全症の治療方法

血管拡張作用やホルモン合成を抑制する薬を服用していきます。他に症状に応じて、血管拡張薬や利尿薬、強心薬を使う場合もあります。

また、交感神経を抑制するβブロッカーも有効的です。肺高血圧症を合併している場合には、合併症に対する治療も一緒に行っていきます。

また外科的治療として「弁輪縫縮腱索再腱法」もありますが、日本で治療できる施設は限られ、人工心肺の装置が必要となるため、技術的に難度の高い治療となります。
現在は内服薬での治療がメインですが、内服薬の質が向上したため、発症後の寿命も長くなりました。

心筋症の治療方法

根本的治療法が確立していません。

そのため、内服治療がメインになります。心臓の収斂性を上げる薬剤や交感神経を遮断するβブロッカーが有効といわれています。肺水腫を併発している場合は利尿剤を使い、対処療法を行っていきます。不整脈が多発する場合には、抗不整脈剤を使うことがあります。

心臓病になったら家庭で気をつけることとは?

 心臓病と診断された場合には、医師の指示に従い、運動を制限し、食事の塩分を控えるなど、生活面での管理や調整が必要になってきます。

力ませないことも大切ですから、散歩する時に引っ張らないようにし、リードの長さなどが適切か、散歩コースの距離はどうかなど気になることは獣医師に相談しましょう。

また、興奮させないようにし、呼吸が乱れている時には、体をさするなど、落ち着くような配慮が必要です。水や食事でむせる時には、様子を見守り、吐く、または吐いた吐しゃ物が気管に入らないように見守るなど、注意が必要です。

この記事を書いた人

OSUWARI編集部