犬の緑内障|痛みを伴い失明する可能性も。症状や治療費について

緑内障ってどんな病気?

緑内障とは、眼圧の上昇などにより視神経や網膜が障害を受ける病気です。

緑内障と似たような病気とカテゴリされる白内障が「目の水晶体が白濁する病気」であることから、「目が緑色になる病気」だと思っている方もいますが、発症の仕組みや治療法も異なります。

白内障が水晶体が濁り白色になる病気に対して、緑内障は眼房水のバランスが崩れ眼圧が高くなる病気です。

眼の中は、眼房水という液体で満たされています。
その眼房水は虹彩の裏側にある毛様体で生産され、虹彩を通り、虹彩角膜角を通って眼外に排出されます。
房水の生産と排出はおよそ同じバランスで行われ、眼圧は10~20mmHg内に維持されています。このバランスが崩れて眼圧が高くなると、視神経を圧迫して、緑内障となり失明につながります。

人よりも急性で進行が早い病気です。

人の緑内障と異なるのは発症から失明までが非常に急速で、早い場合には【発症後48時間以内に失明】してしまい、それは決して珍しくありません。

緑内障の症状は?

初期段階は白目の充血

初期段階では、結膜である白眼の充血があります。犬は黒目が大きいのであまり注意することがなく、結膜炎と似ているため緑内障と判断するのは難しいです。その他には下記の症状があります。

  • 角膜が濁る
  • 目を痛そうにショボショボさせる
  • 目を擦る、気にする
  • 元気や食欲がなくなる

悪化すると痛みや突出が目立つように

目の奥が圧迫されているので、犬は強い痛みを感じています。その痛みを和らげようと目を瞬きさせたり、擦ったりしているのです。
また、上記は急性期であり治療の希望が大きいですが、これから記載する症状は視力が失われ回復不可能な慢性期のものです。

  • 結膜の充血が悪化
  • 眼球が大きく突出する
  • 眼内出血が見られる
  • 瞳孔が開きっぱなしになる

緑内障の原因は?

緑内障は眼圧が上昇することで発症する病気ですが、その原因は眼房水排泄の障害です。
障害の原因により「原発緑内障」と「続発緑内障」にわかれます。

原発緑内障:遺伝要因によって発症

緑内障には、犬種によって発症しやすい犬がいます。特にアメリカン・コッカー・スパニエル、柴犬は他の犬種に比べて発症率が高いので注意が必要です。

緑内障を発症しやすい犬種

  • アメリカン・コッカー・スパニエル
  • 柴犬
  • 柴犬系の雑種
  • 秋田犬
  • サモエド
  • シーズー
  • マルチーズ
  • ビーグル
  • シベリアン・ハスキー
  • バセット・ハウンド
  • フラットコーテッド・リトリーバー

アニコム損保の通院割合では特にアメリカン・コッカー・スパニエルの発症率がぐんに抜け出は勝率が高くなっています。
2歳を過ぎたことから増え出し、8歳には9%も発症しています。

緑内障の通院割合
http://www.anicom-page.com/hakusho/column/pdf/130617.pdf

続発緑内障:他の眼の病気が原因で発症。

遺伝や、なりやすい犬種がいるなど主に言われている緑内障ですが、眼球内部のほかの病気から炎症を起こして続発的に発症することも珍しくありません。合併的な病気は以下の通りです。病気が判明した時点で、視力を失う緑内障の可能性も踏まえる必要があります。

  • 白内障
  • ブドウ膜炎
  • 前房出血
  • 水晶体脱臼
  • 眼球内腫瘍

また、片方発症すると、もう片方の発症率は50%とも言われています。

直接の原因としては、【眼圧の上昇】です。眼球内には、房水と呼ばれる液体が循環しており、毛様体から産生され眼球の前方に流れ、角膜の隅角と呼ばれる末端箇所を経て吸収されていきます。その循環の流れが悪くなると、房水が眼球内部に溜まり、内側から圧することで膨張してしまいます。

これにより、網膜や視神経が圧迫されてへこんでいくことで目が見えなくなっていきます。眼圧が計測で25~30mmHg以上に達し、かつ視角に障害を及ぼしている場合に【緑内障】と判断されます。

緑内障になってしまったら?

疑わしい症状に気づいたときに、【一刻も早く病院】で診察しましょう。

緑内障の進行は非常に早く、一日で視力が永遠に失われてしまう恐れがとても高い病気です。適切な投薬を受けるためにも、専門家の診断を優先してください。

また、発症から短期間で眼圧を下げることによって視力が回復する「急性期」、眼圧をあげても視力が回復しない「慢性期」によって治療が異なります。

急性の場合

原発緑内障急性
眼房水の生産を抑制するレーザー毛様体凝固術や排泄を促進する前房シャトル設置術などの施術が適応されます。

続発緑内障急性
前の項目で触れたほかの病気の後に発症した場合は、まず緑内障を引き起こした基礎疾患への治療が施されます。
初期段階では目薬による投薬治療が主ですが、慢性的な症状に進んでしまうと手術が必要となってくるため、治療費が大きくかかってしまいます。

慢性の場合

原発、続発ともに慢性期では痛みと不快感を取り除く治療が目的となります。
具体的には、強膜内シリコン挿入術や眼球を摘出することになります。

続発的に発症した場合
前の項目で触れたように他の病気の後に発症した場合は、まず緑内障を引き起こした基礎疾患への治療が施されます。
初期段階では目薬による投薬治療が主ですが、慢性的な症状に進んでしまうと手術が必要となってくるため、治療費が大きくかかってしまいます。

緑内障の治療費

内科治療費(投薬治療)

初期段階の急性期に有効で、点眼によって眼圧を下げます。
ここで理解していただきたいのは、緑内障はほかの目の病気に比べて治療費が高くなっていることです。その原因に、点眼のみならず手術が必要になることが多いからです。

基本的に投薬でかかる費用の目安としては、眼圧検査1,500円・血液検査9,000円・レントゲン検査8,000円・点眼薬11,000円ほどといわれています。
すでに視力が落ち始めている犬に恐怖心を生まないよう丁寧に顔を上に向かせ、水滴を垂らすのではなく眼球に滴を直接当てて点眼します。

点眼薬である目薬はこまめな処方が重要です。医師の説明通りに行うことが病状の進行を遅らせるためにも要となってきます。

手術費

慢性期に入ると、手術による外科治療が主となります。
房水の流出を促進する「濾過法」や、房水を産生している毛様体を調整する「毛様体光凝固術」、「毛様体凍結術」などがあります。

また、緑内障によって完全に失明し、強い痛みに苦しんでいる場合は、眼球の摘出術が行われることもあります。手術に合わせて義眼を作り、義眼挿入手術を申請する飼い主の例もあります。

手術費用としては、麻酔料20,000円・手術料110,000円・入院料12,000円です。
病院によって同じ病気でも扱う器具の違いなどで料金に大きな差が出ることも多く、ペットの保険に入っておくことも治療費の軽減にとても重要となります。

飼い主ができることは?愛犬が緑内障になってしまったら

犬の眼の病気は進行が早いため、眼に異常が見られたらすぐに病院へ!!

緑内障だけでなく白内障など眼の病気は、進行がとても早いため「愛犬の眼が変化も?病気?」と少しでも異常を感じたらすぐに病院へ診察してもらいましょう。
また、初期症状なら治療も比較的楽になるので、「もう少し様子を見よう。。。」と経過観察していると失明してしまうこともあります。すぐに動物病院へ行きましょう。

基礎疾患である眼の病気が悪化しないために治療・ケア・予防をしっかりすること

緑内障を発症する原因になった病気がある場合は、その病気が悪化したり再発しないように予防することが大切です。

毎日目の状態をチェック!

特に老犬など老化が始まると様々な病気を発症します。それに伴い緑内障を発症する可能性も高まります。
毎日アイコンタクトをして目の状態を確認しましょう。

目に必要な栄養素をとって予防する

目の病気は、活性酵素が目の細胞を傷つけることで起こる場合もあります。そのため、目に多く含まれる「アントシアニン」「ルテイン」などの栄養素や抗酸化物が豊富に含まれる食事やサプリメントで予防しましょう。

この記事を書いた人

OSUWARI編集部