犬は牛乳が大好きだけどあげてもいいのかな?
結論から言えば「牛乳をあげても大丈夫な子とダメな子がいます」です。
○牛乳は完全食
母乳は赤ちゃんにとって、それだけで全てを賄うことができる完全食です。
子牛は生まれてすぐに歩き出します。体も大きくて活発です。牛乳には、そんな子牛の健康を維持し成長させるのに必要な全ての要素がぎっしりつまっています。
栄養面だけを見れば成長期に牛乳をとるのはよいことだといえます。
○牛乳と犬の母乳の違い
しかし、牛乳は子牛のためのもので、仔犬用ではありません。乳糖(ラクトース)の含有量が違うため、それが体調を崩す原因になります。
■牛乳が犬に与える影響は
牛乳を与えることのメリットとデメリットはなんでしょうか。
○メリット
豊富な栄養素が一番のメリットです。
牛乳にはタンパク質、脂質、炭水化物といった動物が生命を維持するために必要な三大栄養素が含まれています。
体調を整えるビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、葉酸そして成長に欠かせないカルシウム、ラクトフェリン、鉄分も豊富です。
これだけの栄養をひとつで賄える食品はそうはありません。しかも自然由来ですから、サプリメントのような人工的な補助食品に含まれる添加物を心配する必要もありません。
○デメリット
・成犬は乳糖を分解吸収できない
牛乳には子供の成長に欠かせない乳糖(ラクトース)が含まれています。ラクトースを消化吸収するためには消化酵素ラクターゼが必要です。
子供の時には体の中にラクターゼをたくさん持っていますが、成長するに従って消費されなくなっていきます。大人になると乳糖をうまく消化吸収できなくなるのです。
・牛乳と犬の母乳は乳糖の含有量が違う
牛乳の乳糖は5.0%、犬の母乳は3.1%です。乳糖の量が多いため、犬にとって牛乳は消化しにくい食品だといえます。
・アレルギーの原因になる
牛乳はアレルゲンのひとつです。妊娠中の母犬に牛乳を飲ませているとお腹にいる仔犬がアレルギーを起こすことがあります。
・カロリーが高い
牛乳はカロリーの高い食品です。与えすぎると肥満の原因になります。
■犬に乳製品を与えるときの注意点
牛乳は豊富な栄養素を持っています。しかもサプリメントのように高価ではありません。日常的に栄養補助食として与えたいところですが、乳糖不耐症やアレルギーのことを考えなくてはいけません。
・少しずつ与えて様子を見る
一度に量を与えると、乳糖不耐症の激しい子やアレルギーを持っている場合、拒絶反応を起こして重症化することも考えられます。少しずつ与えて観察してください。特に便の状態には注意を払ってください。下痢を起こすようなら中止します。
・乳糖不耐症の場合は飲ませない
牛乳を飲むとお腹がゴロゴロいって体調が悪くなる人がいます。ひどい下痢を起こすこともあります。これは犬でも同じ事、体質的に牛乳を受けつけない体質だからです。1リットル飲んでも何でもない子と10mlでも下痢と起こす子がいます。
これは乳糖分解酵素をどの位持っているかできまります。個体差がありますから仕方がないことです。分解酵素であるラクターゼが働かない乳糖不耐症の子に無理に飲ませる必要はありません。
・熱を加えても乳糖は分解されない
牛乳を温めればお腹が冷えないから下痢をしない、という考え方は間違いです。お腹を壊す原因の乳糖は熱を加えても分解されません。
・アレルギーの危険性もある
牛乳を飲んで痒がったり、体が震えたりするのはアレルギーのせいかもしれません。吐き戻しや痙攣、血便、失神などは劇症を起こしているサインです。すぐ医師に診せてください。
・太りすぎの子には与えない
カロリーの高い食品ですから太りすぎの子、太りやすい子には与えないでください。
■牛乳の代わりになるものはあるのか
栄養的には満点の牛乳。大抵の犬が喜んで食べてくれます。
でも、アレルギーや乳糖不耐症のリスクは拭えません。牛乳に変わる食品はなんでしょうか。
○ヨーグルト、チーズ
牛乳からつくられていますが制作工程で乳糖がほとんど分解されています。カロリーが心配なら糖質カットのものを選ぶといいでしょう。
○カッテージチーズ
カッテージチーズも、つくっている間に分離するホエーと一緒に乳糖と脂質が取り除かれます。カルシウムやビタミン、ミネラルはほとんど残っているので乳糖不耐症や肥満が気になる子にも与えられます。
嬉しいことにカッテージチーズは簡単にホームメイドできます。
・材料
牛乳…500cc
レモン汁…大さじ2杯
1.鍋に牛乳を入れて60度に温める
2.火を止めレモン汁を加え、手早く混ぜる
3.5〜10分おく
4.固形のチーズと液体のホエーに分離したら、キッチンペーパーをのせたザルで漉す
5.水分が落ちきったら軽く絞って完成
ホエーも栄養満点なので人間がありがたく頂きましょう。
○ヤギのミルク
牛乳よりも栄養価が高く、乳糖は4.1%と低めです。アレルギーも起こしにくいといわれます。脱脂粉乳タイプも市販されています。
○犬用牛乳
乳糖を分解し低脂肪になるよう調整されています。価格は牛乳よりも高価です。
○豆乳
熱処理されたタンパク質が主成分なので、乳糖のような消化吸収されにくい要素はありません。大豆に含まれる大豆イソフラボンや大豆ペプチドは健康食品やサプリメントにも使われています。ただし与えすぎは腎臓に負担をかけるので注意してください。
大豆はドッグフードにもよく使用されている食材なのでまず心配ないと思いますが、大豆アレルギーの子もいますから、豆乳も少しずつ与えて様子を見ましょう。
無調整のものを選びます。調製豆乳には砂糖や塩、香料などが添加されているので避けてください。青臭さが気になるときは一度温めてやると香ばしくなります。
■まとめ
犬に牛乳を与えることについては賛否両論あります。絶対にいけない派の主流意見は「成犬はラクトースを分解する酵素を持たないから」で、肯定派の意見は「牛乳の持っているカルシウムをはじめとした栄養素の価値は捨てがたい」です。これは、どちらも間違っていません。
牛乳は元々子牛のためのもの、それを無理に与える必要はありません。しかし、栄養補助として人工的に加工されたサプリメントよりも自然食品の牛乳を使いたいという方を止める必要もないと思います。
牛乳に合う、合わないは個体差があります。自分の愛犬はどっちなのか、それは飼い主が判断するしかありません。