犬の認知症|対策と進行を遅らせるため飼い主ができる8つのこと

犬の認知症(ボケ)ってどんな病気?

老犬、シニア犬の認知症(痴呆症、ボケ)は、「認知機能不全症候群」(CDS)とも呼ばれ、老化による脳梗塞・脳出血、栄養障害などによって脳神経細胞や自律神経がうまく機能しなくなることで起こします。
そのため、認知能力や反応性の低下、学習記憶能力が衰えていきます

人間も認知症になると、徘徊や性格が変わったり、物忘れが激しくなったりしますよね?それと同様に犬も認知症になると徘徊やしつけができないようになったりします。

年齢では、大型犬・中型犬で8歳~、小型犬で10歳を過ぎた頃から発症すると言われています。近年では、犬の寿命が伸びきていることから認知症になる犬も増加してきています。

最近の愛犬の変化・行動に困っていませんか?

昔は、こんなことなかったのに…と

それは認知症によるものかもしれません。

認知症は早期発見することで、症状を直したり遅らせることが可能です。逆に、何の対策もしなかった場合、脳は衰え認知症がひどくなっていきます。
愛犬がシニア犬になり行動や変化を感じたら、一度獣医師に相談してみましょう。

うちの子は認知症?認知症の症状・チェック

認知症の症状とは、犬によってことなりますが、一番多いのが「徘徊」「夜泣き・無駄ぼえ」「反応しない」です。
認知症とは、老化により認知能力や反応性の低下、学習記憶能力が衰えることで以下のような行動・症状がみられます。

大型犬・中型犬8歳以上、小型犬10歳以上のわんちゃんに以下の症状がみられた場合は認知症の疑いがあります。

行動からみる症状

 

  • よく知っている場所で迷子になる
  • 飼い主や知り合いの人を認識できない
  • 机の下や隙間など狭いところに入り、出られなくなる
  • 家の中でも落ち着きがなく、ぐるぐる歩き回る
  • 直角のコーナーで方向転換ができない
  • 障害物を避けることができず立ち往生する
  • よく知っているものに異常な反応を示す

人や他の犬に対する行動

 

  • 声をかけても反応が鈍くなった
  • 撫でても反応が鈍くなった
  • おもちゃで遊ぶことをしなくなった(興味がなくなった)
  • 他の犬にあっても、反応しなくなった
  • 飼い主へ以上につきまとう
  • 他の犬へ攻撃的になった

生活からみる症状

 

  • 違う場所でトイレをしてしまう
  • おもらしをしてしまう
  • ご飯を食べた直後にまたご飯を催促してくる
  • まったくご飯を食べなくなった
  • 突然吠え出す
  • 無駄ぼえが多くなった
  • 夜寝ずに、昼間寝ることが多くなった(昼夜逆転)
  • 夜徘徊し、遠吠え(夜泣き)をする
  • 日中の睡眠時間が増える

どうしてなるの?認知症の原因

カンザス州立大学獣医学部のジェイコブ・モーザー氏は、加齢による変化は犬も人間も同じであることを突き止めました。

神経組織内の情報伝達速度に関し、健康な若い犬では時速360キロであるのに対し、老犬では時速80キロ、そして脳内で代謝されるエネルギー(ブドウ糖)の量に関しては、3歳を過ぎるころから代謝量が減少し、14歳を過ぎると、若い頃の半分にまで減るそうです。

そのため、犬も歳を取ると脳の機能が低下し、認知症を発症します。

また、犬種によって認知症になりやすい犬となりにくい犬がいることから、遺伝的な要因があるとも言われています。そのほかにも、摂取栄養素、生活環境なども認知症と関係があるのではと言われています。

認知症になりやすい犬種

 

  • 柴犬
  • 秋田県
  • 土佐犬
  • 和犬の雑種

この病気は治る?認知症の犬の行動・悩み対策

 

愛犬の認知症の症状で悩む飼い主さんは少なくありません。徘徊や性格が変わってしまったりと、怪我をしないように対策をしたり、どう接していいかわからなく飼い主さんもストレスを感じてしまうものです。

ここでは、そんな犬の認知症の対策をご紹介していきます。

徘徊の対策

認知症の症状として多いのが徘徊です。
意味もなく、同じ場所でくるくるひたすら歩き回ります。老犬で足も衰えてきていますし、ぶつかって怪我でもしたら大変と飼い主としても心配になりますよね。くるくる回る場合は、三半規管の異常、てんかんの発症の可能性もあります。

また、万が一家を出てしまうと、戻ってこれない可能性があるので、迷子対策もしっかりしておきましょう。

隙間は塞いで、サークル内で歩かせましょう。

家の中を徘徊して、今まで入ったことのない狭い場所や家具の下に入り込むこともあります。
一度隙間に入ってしまうと、方向転換やバックして引き返すことでできないため、身動きがとれず飼い主を大声で呼ぶことも。
そうならないように、隙間は犬が入れないように工夫しましょう

また、今まで興味を示さなかったものを誤って飲み込んでしまうこともあります。犬が通ることができる場所には、物を置かないようにすることです。

くるくる家の中を歩き続ける場合は、無理に止めようとせずに、気がすむまで歩かせましょう。
無理やり止めると、飼い主や他の犬に攻撃的になったり、無駄ぼえを始めたりすることがあるからです。

家具にぶつかって怪我をする可能性もあるので、円型のサークルを作りそのなかでぐるぐる歩かせるのがおすすめです。また、足に負担が掛からないように、下にマットを敷いてあげましょう。

徘徊するからとサークル・クレートに閉じ込めるのは、逆効果

徘徊されると困るからと、犬をサークルやクレートに閉じ込めて動けないようにするのは、絶対にしてはいけません。
閉じ込めることで、犬は足の筋肉がなくなり、関節炎や寝たきりになりやすく、最悪認知症を加速させてしまうこともあります。

迷子対策

認知症になったわんちゃんは、物忘れもはげしくなってきます。

しつけだけでなく、自分の家の帰り方も忘れてしまうこともあります。そのため、万が一外へ出てしまったら自力で帰ってくることも困難です。そのまま保健所に連れられてしまう可能性もあるのです。そうならないように、首輪に住所を載せるなどして迷子対策をしましょう。

トイレの失敗

徘徊と同様に多いのがトイレの失敗です。
人間もそうですが、老化により膀胱の容量が減って、長時間おしっこを我慢することができなくなってきます。その結果、トイレにつく前に粗相をしてしまうのです。
肛門括約筋が弱まってくるので、うんちを我慢することができなかったり、「いきむ」力が弱いことでうんちを垂れ流したままなんて事態も生じます。

しかし、老化によるもの。これは仕方がないことです。
犬自身もどうにもできにないことなので、感情的に叱ったりしないことです。叱っても直りませんし、かえって犬のストレスになってしまいます。

大切なのは、それをどうサポートするかです。

室内でトイレができるようにする
お外でのトイレが習慣になっているわんちゃんの場合は、外出の回数が減ったと同時にトイレの回数も減っていきます。
その分家での粗相が増えてきます。この場合は、トイレシートの近くに植物を置くなど外の環境に模したものを置いておきましょう。

トイレの数を増やす。
トイレに行く前に漏れてしまうこともあるので、トイレの数を増やしてあげましょう。
愛犬がトイレのサインをしたら、一番近いトイレに連れて行ってあげましょう。これでけでも、粗相の回数はぐっと少なくなります。

オムツを使う
いつも愛犬の側にいるわけにはいかない飼い主さんもいらっしゃるとおもいます。
その場合は、オムツを活用するのをおすすめします。

犬の寿命が増え老犬の数が増えてきていることによって、犬用のオムツ商品がたくさん販売されています。
まずは、犬用のおむつを買ってあげましょう。

おむつをさせるためには、お尻のまわりの毛を剃ってあげましょう。でないと、うんちやおしっこがお尻の毛についてしまうので、手間が増えてしまうことになります。

食欲がすごい

通常老犬になると食欲が落ちると聞きますが、逆に食欲旺盛になるわんちゃんがいます。
それは、単にお腹が減ったというよりも、さっき食べたことを忘れて「まだご飯食べてないよ」と催促しているのです。
若い頃は好き嫌いが激しかった子が、なんでもバクバク食べるようになるケースも珍しくありません。

食欲がすごい場合は、一日の餌の量を増やすのではなく、餌の回数をふやしてあげましょう

量を増やしてしまうと、運動量が減った老犬は肥満になってしまう可能性があるので、できれば一日の食事量は変えないで工夫しましょう。

夜昼逆転生活・夜泣き

認知症になると昼と夜が逆転してしまい、日中ずっと寝ているのに夜になると起きて、徘徊やいたずらなど様々なことをするようになります。突然夜中に大きな声で鳴き始めたりと飼い主さんにとっても大きなストレスになってしまします。

夜鳴きや遠吠えする原因としては、

 

  • 目が見えなくて不安になっている
  • 寝返りが打てず血行が悪くなり、飼い主を呼んでいる
  • 体内時計がずれてしまっている
  • 食事や排せつのサイン
  • 関節が痛い

このようなことが考えられます。
主な対処法として5つの方法をご紹介します。

お昼寝をさせない、寝る前に遊ぶ
夜の徘徊や夜泣きがひどい場合は、日中できるだけ寝かせないことです。また、寝る前にしっかり遊んであげると疲れて夜寝てくれるようになります。

日光浴をして体内時計を正す
真夏以外は、日光浴をさせておくと体内時計が正常になり夜寝てくれるようになったりますよ。

飼い主さんの臭い付きの服を与えて安心させてあげる
それ以外には、孤独感を感じ泣いている場合もあるので、飼い主さんの臭いがついた毛布や洋服をおいてあげるのもひとつのてですよ

子犬返りには寄り添って声をかけてあげて
精神が子犬に戻ってしまう「子犬返り」をすると、クーンクーンと悲しい声でなくようんあります。
子犬返りしてしまった場合は、飼い主が母犬の変わりとなって犬に寄り添って声をかけたり撫でてあげることで安心して、鳴き止んでくれます。

体調に変化があるのかも、一度病院へ行ってみよう
あまりに大きな声で鳴く場合は、体に痛みや異常がある場合もあります。老犬ですから、急に体調が悪くなる場合もあるのです。
あまにうるさい場合は、一度獣医師に相談してみましょう、

理解力の低下

認知症になると今までできたいトイレやしつけを忘れてしまったり、失敗してしまうことがあります。
飼い主さんのことや自分の名前、お友達のわんちゃんさえ忘れてしまうことがあるのです。

だかといってそのままにしていては、進行が早くなるだけです。

できるだけ頭を使う遊びをしたり、外の空気を吸わせて脳に刺激を与えることが重要です。
具体的には、転がすとおやつが出てくるおもちゃや、おやつを左右どちらかの手に隠して「どっちに入っているでしょう?」と当てっこゲームなど、考える遊びです。

攻撃的な行動

中には攻撃的になってしまうわんちゃんもいます。
認知症にかかってしまうと脳による制御能力が低下していきます。その結果、攻撃行動を制御することができず、人や犬に噛み付く、吠えるといった行動を起こしてしまいます。

愛犬とはいえども、無理に打ち解けようと近づいてはいけません。悲しいですが、飼い主を忘れている可能性もあるのです。
目の前に人間に恐怖し「近づくな!」と攻撃してくるので、飼い主であろうと関係なく、噛み付いてきます。

子供や他の犬や猫なども近づけないようにしましょう。
「この子は子供が好きだったから!」と昔は子供や他の動物が好きでも、性格が変わり、昔好きなものでの攻撃する可能性は十分にあります。
他の人や動物が怪我をしないためにも、近づけないといった配慮が必要です。

まったく動かない・寝たきり

認知症により、脳幹部が衰えると運動能力が著しく低下していきます。また、関節や筋肉が衰えることで運動自体したがらないのです。
老犬の場合、病気による衰退も考えられるので、一度病院で診察を受けることをおすすめします。

散歩を嫌がる場合でも、できるだけ運動をさせてください。寝たきりだからと運動をさせないと、ますます筋肉が衰え、刺激を受けることもないので、認知症の進行が早まります。寝たきりのわんちゃんを補助グッズなどもあるので、それらを活用しましょう。

散歩補助グッズの活用

足腰の弱ったわんちゃんのための補助グッズがあれば、身体にかける負担を少なくし散歩することができます。
主に、犬用車椅子、後足サポートハーネスやベストなどです。
小型犬の場合、カートでお外を散歩するだけでも十分脳への刺激になるので、定期的にお散歩に連れて行ってあげましょう。

床ずれで壊死しないように気を付けましょう。

寝たきりになると、体の一部に圧力がかかり続けます。すると、その部分の血流が悪くなり、壊死を起こしてしまいます。とくに体重のある中型犬や大型犬、長時間寝ていることの多い場合などは、注意が必要です。

床ずれしないためには、飼い主が定期的に体の位置を変えてあげることです。
同じ場所に圧力がかからないように、体をひっくり返してあげましょう。

体温管理、冷え性対策をする

寝たきりになると体を動かさないため、体力が低下して自分で体温調節することが難しくなっていきます。ケージに直接日光が当たらないか、クーラーの風が当たらないかなど環境に注意しましょう。

また、冬や夜冷える場合は、冷えの対策をしっかり行ってください。体温が下がってしまうと、免疫力の低下で病気にかかりやすくなったり、病気の進行は早まってしまう可能性があります。
毛布だけでなく、湯たんぽやホットカーペットなど犬の体温が下がらないように工夫をしてください。

犬の冷え性に関しては「【冷え対策】老犬の冷えは命に関わることも!」を参考にしてください。

飼い主ができることは?認知症の進行を遅らせる対策・治療・予防

犬の認知症・痴呆に有効な治療薬というもの残念ながら現在ではまだ存在しません。しかし、ちょっとの工夫で症状を落ち着かせたり、進行を遅らせることはできます。

脳に刺激を与える

毎日同じことを繰り返しているだけでは、脳を使わないので認知症の進行が早くなってしまいます。 脳に刺激を与えることは、認知症の症状を遅らせることができるのです。

散歩コースを変える

いつもの散歩コースではない道を行くことで、犬にとっては知らない場所のため、ニオイを嗅いだり、知らない風景、道、音、を感じることで脳に刺激を与えることができます。

また、筋肉を動かすことで寝たきりになることを防ぐことができます。

ドッグランにいく

他の犬に触れ合うことは、散歩と同じように脳の刺激になります。
知らないわんちゃんのニオイやどんな犬なのか興味をもつことで、脳を使うからです。

知育玩具を与える

今では犬の知能を高めるというおもちゃがたくさん売られています。こういったおもちゃで、考えさせることが認知症の予防へとつながるのです。

新しいペットを迎える

ドックランと同様に他の犬や生き物がくることで、大きな刺激になります。先住犬が寝たきりの状態になってからでは、反対にストレスになってしまうので、老境に入る前がいいかもしれません。
実施、新しい子犬を迎えたら、先住犬の老犬が元気になり、走り回るようになったという話をよく耳にします。

脳を鍛える遊びをする

「おすわり」「まて」をちょっとアレンジして難しくすることで犬にとって良い脳トレになります。飼い主をコミュニケーションもとれるのでオススメです。

食事で症状を抑える

サプリメントで認知症の症状を抑える

和犬は認知症になりやすいと書きましたが、その理由としてこのような仮説があります。
日本人は肉類よりも魚類を中心の食生活を送ってきたため、和犬の食事も同じでした。そのため、魚介類に多く含まれているDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった不飽和脂肪酸を活用する脳神経細胞の代謝システムが作り上げられてきたのです。しかし、現代の食事がドッグフードに変わったため、不飽和脂肪酸が欠乏し、脳の代謝性疾患が起こるようになったと考えられています。

そのため、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)の入ったサプリメントやフードを与えることにより症状が改善することがあるようです。犬の体調や症状にもよるので、一度獣医師の先生に相談してみましょう。

糖質の補給

脳のエネルギーである糖質(炭水化物)を補給することで、効果があるといわれています。

マッサージをする

頭部の血行を良くすることも有効なため、頭部のマッサージも予防に良いといわれています。

この記事を書いた人

OSUWARI編集部