糖尿病とはどんな病気?
私たち動物はブドウ糖をエネルギー―に変えて、生活しています。このブドウ糖は血液に乗って体内の細胞に運ばれて、筋肉や臓器など動かす燃料のような役割を果たしています。
インスリンは体内で血糖値を下げてくれる唯一のホルモンで、糖をエネルギーに変えたり、脂肪として蓄え、体の状態に応じて調整してくれる働きをするホルモンです。
病気が進むと体内のインスリンの量が足りなくなり、摂取した糖分を、上手く調整できず、血液中に糖があふれてしまい、残った糖が尿に排出されるため「糖尿病」と言われるようになったのです。
糖尿病になるとどんな症状がでるの?
犬が糖尿病にかかると以下のような症状が現れてきます。
- 頻繁に水を飲むようになった。
- おしっこの回数や量が増えた。
- 食欲の増加
- いくら食べても痩せる、または肥満
(Ⅱ型糖尿病、未避妊のメスは黄体期に太る) - 口臭がする
悪化すると
- 血中のケトンが上昇して、嘔吐する。
- 食欲減退
- 元気がなくなる
という状態がみられるようになります。
糖尿病が悪化すると、白内障や細菌による皮膚感染症、膀胱炎などの症状も合併症として表れてきます。
糖尿病の原因と種類
糖尿病は主にⅠ型糖尿病とⅡ型糖尿病に分けられます。生活習慣がもとになって発症するのが、Ⅱ型糖尿病です。犬の糖尿病の場合、7~8割がⅠ型糖尿病と言われています。
Ⅰ型糖尿病は、すい臓のβ細胞が破壊されて、すい臓でインスリンを生成する力がなくなった状態を言います。
Ⅰ型糖尿病では、食事療法などの生活習慣の改善では、完治することが難しく、必ずインスリンの投与が必要となってきます。
Ⅱ型糖尿病は、肥満が主な原因と言われています。
Ⅱ型糖尿病では、インスリンは分泌されても、動きが悪く正常に働かず、血糖値のコントロールがうまく行かない状態を言います。
Ⅱ型糖尿病は人や猫に多いとされていますが、一部犬にも発症する場合があります。
糖尿病の原因には遺伝的な要因もあると考えられています。
日本ではミニチュアシュナウザー、ミニチュアダックスフント、シベリアンハスキー、米国では、ビーグル、シェットランドシープドック、キースホンド、プードルなどの肥満になりやすい犬種は発症リスクが高い犬種と言われています。
糖尿病を誘発する病気として、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)があります。
この病気は副腎皮質から分泌される、ストレスホルモンコルチゾールが過剰になり、様々な症状を引き起こすことがあります。
このクッシング症候群は、未避妊のメスに症状が出やすいことがわかっています。実に糖尿病の犬の6割がこの未避妊のメスの黄体期に発症しているのです。
ほかにも肥満と歯周病も糖尿病を誘発する引き金になることも少なくありません。
犬の糖尿病の治療法は?
愛犬が糖尿病かな、と思ったら早めに獣医師の診断を受けましょう。
動物病院では血糖値を測定します。最近では、直近2週間から1か月さかのぼって、血糖値が測定できる「血糖コントロールマーカー」も導入されています。これによって、血糖の変動を確認することができ、より正確なデータのモニタリングができるようになりました。
糖尿病と診断された場合、未避妊のメスの場合は、避妊手術を受けることになります。
次に、体重のコントロールをするよう、獣医師から飼い主は指導されることになります。体重のコントロールができ、肥満が解消されても、インスリンの分泌が正常でない場合は、インスリン注射を一生続けることになります。
また、食事療法も併用して行っていきます。
高タンパク、低脂肪、高繊維の食事が良いとされています。この食事によって、筋肉量を増やす食事をとることで、糖の血中への吸収を穏やかにすることができるのです。
食事療法を正しく行うことで、インスリンの量を安定化させ、症状を悪化させないようにすることが大切です。”
愛犬に家庭でできる予防法は?
愛犬を糖尿病にさせないためには、基本的な考えとして
- 肥満にさせないこと
- 歯周病予防に毎日の歯磨きを日課にすること
が大切です。
ほかにも、適度な運動をさせることで、血中の糖の吸収が良くなり、インスリンが安定して働くことができるようになります。
併せて、メスの場合、黄体期に糖尿状態になる場合には、早めに避妊手術をすることをお勧めします。
早期発見の手がかりとして、愛犬が摂取している水の量をチェックしていくことも大切です。
一般的に犬の体重あたり100㎖以上飲むと、多いといわれています。具体的には、体重が10㎏であれば、1日500㎖~900㎖が適量といえるでしょう。